NFT×ギフト10兆円のギフト市場にNFTがどう活用できるか?
伝えたいこと伝えたいこと
ギフト市場のNFT化、NFTギフト商品の開発は緒に就いたばかりです。しかし人間にとってギフトは根源的な欲求です。ギフトは通常の市場取引と異なり、直接的な見返りを求めず、贈与行為を基盤とする経済の仕組みであり、社会の習慣です。NFTの登場によって、これまでなかったような全く新しいギフトの形が生まれてくることが期待されます。
ギフトがつくりだす巨大な経済と循環
人間はギフトが大好き
現代社会にあっては、日々の生活、事業活動の隅々で、直接的な見返りを求めないギフト(贈与)という行為が様々な場面で顔を出しています。お年玉、誕生祝い、入学祝い、お中元、お歳暮、おごり、お見舞といった形で、様々なギフト行為が行われています。被災地への「寄付」やクラウドファンディングへの「支援」も、ギフト行為がつくり出す大きな経済圏の一角を占めているといっていいと思います。
医療、情報通信、食品と同じ市場規模
ある調査によると、ギフト市場の規模はコロナ禍でかなり縮小しましたが、2022年には10兆1,040億円とコロナ前の水準に戻ったそうです。このうち、中元・歳暮市場は6,700億円。国内需要の低迷が続くなかで「ギフトエコノミー(贈与経済)」の役割は日本経済全体として少なくありません。医療・健康産業、情報通信産業、食品産業の市場規模がいずれも約10兆円ですから、ギフト市場の大きさは驚きです。
ギフトがつくる社会と経済の循環
人間は関係性を生きる生き物。人と人、家と家、親と子、企業と企業の間の信頼関係をうまく維持し、お世話になった人への感謝の気持ちを表現するギフトは社会での関係や循環を維持していくうえで欠かせない行為となっています。日本社会において、ギフトは経済循環という点に加え、社会循環という点でも重要な役割を担っています。
NFTとギフトの親和性
希少性・真正性・特別感の証
NFTの出現によって、ブロックチェーンに書き込まれた改竄不可能なデジタルデータが、商品やサービスが希少で真正で特別な価値をもつことを保証し、アピールしていくことが可能になりました。
こうしたNFTの特性は、感謝の気持ちを伝え、信頼関係をつなぐ社会的行為であるギフトにとって欠かせない要件です。ギフトエコノミーは、互いの信頼に基づいて成り立っており、贈り物は感謝の気持ちや信頼の象徴として受け渡しされます。
フィジタル新次元
これまでギフト(贈答)といえば、高額食品であったり酒類であったりしましたが、今後はそうした消費財から体験財(観光、飲食、エンターテインメント)に移行していくと考えられます。感性的で、目に見えない、メンタルな価値領域、すなわちフィジタル新次元への期待が広がっていくと考えられます。また、それが本物であり逸品であることの証が重要となってきます。NFTの出番はそこにあります。
NFTギフトの可能性
非日常体験の贈り物
希少性・真正性・特別感の証としてNFTを活用し、非日常体験を贈るというギフトは成長が見こまれる分野です。
リゾートホテルの宿泊利用権や会員権を記念日ギフトとして子どもから親に贈ったり、企業からお得意様へのプレゼントや景品して贈るなど様々な活用が考えられます。
既に「NOT A HOTEL」や「MikoSeaリゾート」でギフト機能が供用をスタートしています。
サービスの贈り物
品物ではなくプロのサービスを贈るとスタイルも今後の広がりが期待できます。例えば、ダスキンでは多様な「おそうじギフト」をショッピングサイト等で販売しています。手軽に贈れ、高齢者や忙しい人へのギフトとして新たな市場開拓につながっています。
NFTを活用したサービスギフトの事例はまだないようですが、二次流通の可能性を考えると新たなトレンドとして登場することが期待されます。
プレミアムギフト
逸品ギフト、体験ギフト、サービスギフトのいずれを問わず、特別感・高級感・限定感のあるプレミアムギフトもまたNFTとの相性のいい領域として今後注目されていくと考えられます。
日本が誇る伝統工芸品、各地で開催されるお祭りや花火大会の特別観覧席、音楽・スポーツイベントの予約権等、様々な領域での活用が想定されます。
プレミアムギフトは贈り手のセンスが問われるだけに、新たなギフトスタイル、贈答文化の極みとして成長が期待されます。
気軽で日常的な行為として
これまでギフトと言えば百貨店の中元・歳暮のセールで贈答品を購入し、季節のご挨拶として送り届けるという流れが一般的でしたが、世代交代のなかで日常的で気軽なギフトスタイルが出現しています。
その一つとして“キモチを贈りたい そのとき贈ろう”という触れ込みの「LINEギフト」があります。ジフマガジンではLINE上でNFTを贈り合えるサービス「NFTギフト」を開始しています。提供9,000万人を超すユーザーがいるLINEにおける、フォーマルな贈答ではなくパーソナルなギフトが今後どう展開していくか注目したいと思います。
“気持ちをギフトで表す「心付け」アプリ”というコンセプトの「GIFPOT」のサービスもスタートしています。デジタル&携帯感覚でのギフトスタイルは今後とも広がりそうです。
まとめNFTはギフトエコノミー(贈与経済)との親和性が高く、社会における稠密で持続的な関係の構築と循環を促す歯車として、これからの活用と成長が期待されます。
自利を超えたギフトという行為は、気持ちが豊かになることが少なくありません。また感謝の気持ちが人と人を結びつけ、社会のまとまりや持続可能性を高めていく意味を強めています。
「ありがとう」「お互い様」「お陰様」の循環が社会も経済も、個人も会社もよりよいものに発展進化させていくための背骨となって欲しいと思います。
東京大学工学研究科都市工学専攻を修了の後、公益財団法人九州経済調査協会や九州大学において長年、地域調査や産業政策・地域政策の立案に従事するとともに、数多くのまちづくりに参画している。