【ふるさと納税×NFT】第2段階のふるさと納税 キーはNFTを使ったプロジェクト創成
地方創成の施策としてすっかり定着した「ふるさと納税」。寄付の呼び込みを通じた量的な経済効果は開始当初の想定を大きく上回る規模になっています。しかし、寄付者と地域との交流関係の創造とそれを通じたサステイナブル(持続可能)な地域づくりという点では課題が残されています。
真の課題解決のきっかけとなるのがNFTという手法です。
伝えたいことNFTでサステイナブルな関係づくりへ
返礼品からプロジェクトへ。地域に人をつなぎ、資金をあつめ、ファンコミュニティをつくる。その強力なツールがNFT。「ひと」にフォーカスしたサステイナブルな関係づくりが動き出す。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税の制度は、所得税・住民税として払う税金の一部を、故郷や応援したい市町村に寄付し、地域活性化や大都市圏との格差解消につなげようということで2004年に始まったものです。ふるさと納税の 2022年度受入額は全国で約9,654億円(対前年度比16.3%増)、5,184万件(同16.7%増)と増加を続け、1兆円を超える勢いです。 最近では、地域貢献、地域関係人口、第二のふるさといったキーワードが語られ、地域活性化に向けた意識の広がりが見られます。一方でふるさと納税を呼びこみたいということで、自治体間の返礼品競争が激化しています。「ふるさと納税市場」といっても過言でないほどの巨額のお金と返礼品が日本中を巡っています。
ふるさと納税の課題
ふるさと納税の課題
- 返礼品競争が激化するなかで「地域」より「返礼品(商品)」が前面に出るような状況となっている
- 言葉を換えると、応援する地域や町村を選ぶより返礼品を選ぶことが一般化している
- 自治体と寄付者との関係が一方的・一時的なものにとどまり、双方向的で持続的な関係につながっていない
- 「勝ち組」の地方の自治体と、都市部や魅力的な返礼品の少ない「負け組」の自治体との間に格差が生まれている
ふるさと納税NFT
こうしたなかでNFTを活用し、ふるさと納税制度本来の趣旨にあった自治体の展開が求められています。けれども現状では自治体ゆかりの写真やアートを NFT化し、観光PR、文化イベント、地域イメージ発信等のシンボルとしてNFTをあてるというパターンにとどまっています(別表参照)。
今後の展開としては、地域活性化をめざすプロジェクトに、寄附金の使途を特化するかたちで「参加」「応援」を呼び込み、地域ファンコのミュニティをつくっていく手法としてNFTを活用していくことが挙げられます。
山古志 ではデジタル町民証がトークン保有者のサステイナブルな関係性をつくり出し、地域活性化の共同プロジェクト展開につながりました。
人と地域、人と人をつなぎ、プロジェクトの推進触媒、協働メンバー証として、地方創成分野でのNFTの役割はこれから大きくなりそうです。
ふるさと納税NFTの事例(2023年度)
県名 | 市町村名 | 寄付の使途 | 返礼品の内容 | 目標金額 |
---|---|---|---|---|
宮城県 | 仙台市 | 仙台市の観光振興や地域食材のPR | グルメスポットや名物料理をモチーフにしたNFT(牛たん、ずんだ餅、牛すじ煮など) | 200万円 |
静岡県 | 伊豆市 | 伊豆市の観光振興や美しい海岸線のPR | 砂浜、波、夕日、シュノーケリングスポットなどを描いたNFT | 250万円 |
岐阜県 | 飛騨市 | 飛騨市の観光振興や地域資源の活用 | 季節ごとの風景を描いたNFTコレクション(桜、緑、紅葉、雪景色など) | 300万円 |
長野県 | 軽井沢町 | 軽井沢のアート文化振興や地域資源のPR | 軽井沢の美しい自然風景やアート作品を描いたNFT | 400万円 |
京都府 | 舞鶴市 | 舞鶴市の伝統的な祭りやお祭りのPR | 山車、神輿、夜店、花火などを描いたNFTコレクション | 180万円 |
福岡県 | 太宰府市 | 太宰府市の歴史的な名所や文化遺産のPR | 太宰府天満宮、太宰府政庁跡、古代の遺跡を描いたNFT | 150万円 |
大分県 | 別府市 | 別府市の観光振興や温泉地の保全活動 | 「別府温泉NFT」コレクション(温泉景色、湯煙、温泉街の風景など) | 500万円 |
熊本県 | 阿蘇市 | 阿蘇市の美しい自然景観のPRや地域資源の活用 | 阿蘇山、草原、温泉、星空などを描いたNFT | 300万円 |
沖縄県 | 石垣市 | 石垣島の美しいビーチや海中の風景のPR | 白い砂浜、青い海、サンセットの美しさを描いたNFT | 220万円 |
まとめふるさと納税NFTは使途特化型のプロジェクトに可能性あり
地方創成分野でのNFTの活用はこれからです。従来型のふるさと納税は競争激化で伸び代は少なくなっていますが、ふるさと納税NFTはまちづくり、文化事業、観光開発、人材育成など、「プロジェクト」をベースに多様な領域での展開が期待されます。
東京大学工学研究科都市工学専攻を修了の後、公益財団法人九州経済調査協会や九州大学において長年、地域調査や産業政策・地域政策の立案に従事するとともに、数多くのまちづくりに参画している。